かくして、Eさんの1回の入浴が完了する。
浴室から部屋へと車いすを押していると、Eさんが言う。
「あーあ、まただまされてしもうた」
うーん、どうもわかっているらしいな。
なのに、ほぼ毎回のように、このパターンで成功するのです。
これはいったい、どういうことなのか。
おそらくEさんは、こうして「だまされて、いやいや入浴する」という入浴のしかたを選んでいるのでしょう。
それが職員への遠慮からなのか、主体性を発揮せず、受身的存在となることで世の中をうまく乗り切ってきた、日本人によくある処生術からなのか、よくはわからない。
ただ、「だまし、だまされる」という関係を、双方が演技することで、紛れもない現実がそこに生まれるのだということは確かなのです。
介護って、いや人間って面白いなと思うのは、こんなときです。